らむちる文庫

上京したて、迷える仔羊の徘徊録

ヒッチハイクで乗せてくれた方が新興宗教の信者だった

 

 

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〔ステンドグラス 宗教的な意味合いが深い〕

 

 

ヒッチハイクでは普通に生活していては絶対に出会わないであろう人と車に乗り合わせ、一期一会という状況も相まってオープンな関係でお話ができるというのが魅力だと思います。

そんなヒッチハイクで出会った人で最も異世界を感じた人の話。

 

 

 

出会い

僕ら*1ヒッチハイクで無事高知県まで到達することができ、そこから仙台へ帰ろうと高知ICの手前でヒッチハイクを試みた。夏真っ盛り。かんかん照りのなか止まる気配のない車に向けてボードを掲げ早2時間が経過していた。もう諦めようかというその時、一人の若々しい中年女性*2だった。

 

「淡路まで行くん?乗ってき乗ってき!!」

 

神だ、、、。

ヒッチハイクの神は僕らを見放さなかったのだ‥‥‥!

 

この時はまだ知る由もない。

彼女が神と対話のできる存在であるということを‥‥

 

地獄の車内

「淡路行くんやろ?したら乗せてやらなって思ってなあ! 暑い中大変やったやろ?くつろいでくつろいで!*3

 

「いやいや、スミマセンほんと助かりました!!!!!」

 

神である*4

めちゃめちゃいい人だ、相方*5と胸をなで下ろす。

 

しばらくは僕らの自己紹介やなぜヒッチハイクをやっているかなど決まりきった会話をしており、とにかく明るくて話しやすいいい人で良かったと、個人的にはいいムード*6だった。

 

そのムードが徐々にだが確実に壊れていったのは彼女の不可解な言動からだった。

 

 

(例に漏れず以下会話文)

 

「あなたたち、でも疲れてるでしょ?」

「ですねー」

「私がこれから淡路島で会う〇〇さんにパワー入れてもらったらいいよ」

「‥...パワー....ですか?」

「うん。パワー。パワー知らん?」

「ちょっと知らないっすねえ、、(???????)」

「知らんの!パワーやでパワー。楽になるから、入れてもらい」

「....................................................はあ。」

 

 

どうやら彼女はそっちの方らしい。早い話、俗にいう新興宗教の信者らしいことを噛み合わない会話が物語っていた。

 

それからというものそのパワーでいかに自分に奇跡が起こったか、そのこれから会う〇〇さんとやらがいかに恵比寿様のような顔つきであるかなどについて熱く語られ、言わずもがな僕たちは笑いをこらえるのに必死だった*7

特に相方はひどかった。頑張って相槌を打つ僕の太ももをツンツンしてくるんだもん。

 

途中のPAに着くとトイレ行くからと車内に僕らを残して出て行った後の開放感ったらなかった。

 

やばいやばいwwwwwwパワーってなんやねんwwwwwwwwwwこれはやばいwこの車はヤバイwwwwwwwwwwwwwてかやばい戻って来たwww絶対笑うなよwwwww

 

この旅一番の大盛り上がりである。

 

 戻ってくると彼女はお腹が減っていると言っていた僕らのためにつくねを買って来てくれた。

僕は根は良い人、というか普通に良い人なんだよなあと思った。

相方は食べるかどうか心底訝しげにつくねとにらめっこしていた。

 

 

 パワー体験

淡路島で新設されたその宗教の道場でかの恵比寿顔の方*8と何かの打ち合わせらしく、そこからは恵比寿様に明石海峡大橋の手前*9まで乗せてもらえるとのことだったので、成り行きで道場に行くことになった。

そこからが僕らの常識の範疇をさらに凌駕する異世界との交流だったのだ。

 

かなり過疎化が進んでいるであろう田舎のマンションの一室がそれだった。

彼女と合流したエビス*10により、半ば強制的に何かのリストに署名させられ道場に入れられた。中に入ると新設だからか小綺麗で、和室の二間の壁を取っ払った広々とした20畳ほどの一室と障子で仕切られた8畳ほどであろう小部屋*11の二部屋だった。大広間には簡易な敷布団と枕が4セット。中央にある床の間は全面金箔で覆われ、書道家でもある教祖様の書が堂々と飾ってあり、その前にお賽銭箱のようなものが置かれていた。

 

その布団に僕らはうつ伏せで寝かされ、早速パワーを入れてもらえることに。

 

その施術?儀式?は1〜2時間ほどだったが、結果からいうと笑いをこらえるための表情筋が鍛えられる程度のものだった。

僕らの信仰心が足りなかったのだろうか*12、早い話ちっとも楽になどならないのだ。

 

 

儀式の一部始終をお伝えしよう。

 

  1. 「手かざし」と言われるその宗教最初の一手であり最大の奥義を、リュックの重みに耐えかねていた僕の両肩に受ける。これが前述のパワーである 
  2. 1時間弱パワーを注入してもらったのちに起き上がると、エビスの「楽になったか?」の一言と嘘ひとつない至上の笑み 
  3. エビスと1mに満たない距離感で対面した形で椅子に座り、目をつぶらされる。その後なかなかの声量で謎の呪文を唱えられる。およそ15分ほどだったとは思うがカップラーメン5個では語れない悠久の時を過ごす。
  4. 久しぶりに入ってくる光が後光のようにエビスの満面の笑みを映し出す
  5. 例の金の床の間へ、三拍四礼ナンチャラと謎の回数祈りを捧げる

 

 

 手かざしでは不思議とあったかいような気もしてきたが、見事に全身がダルいまま。

あとで、乗せてくれた女性にも「顔色全然違うやん!」などと言われたが全く自覚はない。

 

ダントツで辛かったのは3の呪文タイム。もうこの状況が謎すぎて思わず吹き出すところだったw

だがここで笑いを押し殺さねば俺が殺られると本能で理解。歯を食いしばって乗り切った。

 

 

宗教への誘い

 この後は女性の用事などで出発まで時間があり、その間もう一人の信者*13にチラシや会報のようなものを見せてもらった。僕が色々と尋ねると意外にも詳しくは知らないようであった*14

 

しつこい勧誘などは全くなく、以外にもその後はあっさりしていた。

逆に

「怪しいでしょ?ごめんね、、」

といった態度まで見られたのは意外だった。

しかし最初の女性には

「仙台にもあるから体験でも良いからもう一回行ったほうがいい!」

「1万5千円で3日間の研修を受けられる。それでパワーを出せるようになる」

 などと真剣な眼差しで言われたので最上級の愛想笑いと曖昧な返事でその場を乗り切った。

 エビスはとにかく神がかった笑顔を振りまいているだけだった。

 

 

 怪しげな部屋

いよいよそこを後にする段になり、玄関口の方へ行くと小部屋の上にある札が目に入る。

 

「母子室」

 

 中村文則の「教団X」を読んだこともありいかがわしい部屋ではないかと推察したが、後で調べると特にそれらしい情報はなく、単に親子で一緒に儀式をするようなところのようだ*15

 

 

夕食に連れられる

道場を後にし、女性、エビス、そして僕ら2人で淡路SAまで車で向かった*16

旅路ではよくあることだったが、この日も例に漏れず飯らしい飯にありつけていなかった。

 ちょうど日も暮れていい時間帯だしせっかくだからと、彼らのよく行くお店に連れて行ってもらった。

 

お店はメニューが多くアットホームな雰囲気。

「なんでも好きなもの頼み〜」と相変わらずの優しさで言われたので、2人して鰻丼とうどんのセットにした。

 

はっきりそう言われたわけではないが、奢ってくれるような雰囲気だったので高すぎず安すぎずの程よい値段のものを選択。

 

手かざしにどれほどのパワーがあるかなど、その宗教の求心力となっているのであろうお決まりのエピソードを聞かされながらも、普通の会話も楽しく、そうこうしているうちに美味しくたいらげた。

 

事件が起こったのはその後のこと

 

「美味しかったです!」

「よかったよかった!」

 

などと和やかなムードのお会計時である。

 

一応無礼の無いよう財布はしっかり出しておいた僕らに聞こえてきたのは

 

「お会計別で」

 

というエビスの静かな言葉とその日見る初めての真顔であった。

 

 

そして別れ 

最後に会計をした僕ら2人はぶつくさと文句を垂れながらも、ここで彼らの気分を害しては身の危険に直結すると、ありったけの笑顔で車に乗り込む*17

 

そこからSAまでは前で彼らは話し込んでいたので、僕らは後ろでバレないように手かざしを真似て暇を潰した。

 

 

淡路SAは大きな観覧車があったり明石海峡大橋*18が見えるということもあり非常に大きく賑わったサービスエリアだ。

 

駐車場に入り、どこで下ろそうか、などという頃になって徐々に現実に戻っているような感覚に襲われた。

なんだか感極まって大声で

「ありがとうございました!!!!」

と別れを告げ、車が小さくなって行くのを見届けるまでもなく一目散に喫煙所を探した。

 

喫煙所では会社員風の男女が観覧車を見ながら煙草を吹かしていた。

その光景を見てさっきまでの状況との差に歴然とした

 

「やっぱこっちが現実だよなあ‥‥‥」

 

2人でしみじみと煙草を吸った*19

 

 

 

終わりに

事あるごとに宗教ではないからと強調されたが新興宗教であることは間違いなさそうだ。「宗教」と言う言葉に良いイメージのない今の時代にはそう言うしかないのだろう。

 

ここまで読んで気づいた方がいるかもしれないが、今回出会ったのは

崇教真光(すうきょうまひかり)」と言う団体の方々。

 

宗教真光はフランス・ドイツ・ベルギーでカルト指定されている大変危険な宗教。
真光には初級・中級・上級とあり、自分の位を上げるためには信者を増やさなければなりません
だから友達や親戚を片っ端から誘い、道場に連れて行こうとする。

 

引用元:

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14107237414

 

 

なにはともあれ無事だったので、宗教関係者が身近にいない僕には貴重な体験となった。

旅人だったから逆にしつこくは勧誘されずに済んだのでは、と今では思う。

 

意外だったのが、親切で、コミュニケーション力もあり、普通に接している分にはなんらヤバイ感じがないということ。

女性の旦那さんは大手自動車メーカーに務めていて、聞いた話だと普通に裕福で幸せな暮らしを営んでいるようだった。

 

しかし子供の話には心底同情した。

両親が信者だと自ずと自分もそうしなければならない。

幼い頃からの洗脳で人生を棒に振ってしまうことになるかもしれないし、もしおかしいと気づけても両親を前にしてそれを言うのは難しいだろう。

それが理由で周りからは奇異な目で見られるかもしれない。友達や恋人を失うかもしれない。

色々考えさせられた。

 

個人的には団体の構造が気になった

岐阜の高山に総本山があり、その建物は非常に立派でかなりのお金がかかっていることは明らかだった。四国八十八箇所の巡礼施設を始め全国、そして最近はアフリカにまで道場を作っているらしい。

そう言ったお金が「パワー研修二泊三日15000円」などでまかなえるはずもない。

「身体から毒素が出て行く」などと謳ったお米のチラシが道場の掲示板に貼ってあった。

まあ色々あるのだろう*20

 

 

今回のヒッチハイク計15台の車に乗せていただいたのだが、これがダントツで衝撃的な出来事だった。

なかなかこういうことはないかと思うし、嫌な人は嫌だろうからオススメはできないが、これがヒッチハイクの醍醐味だ!と僕は言いたい。

乗せてくださる方はみんないい人で面白い話もたくさん聞けるので、是非*21

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:その時友達と二人、仙台からただただ西を目指すだけのヒッチハイク旅行をしていた

*2:美魔女といった感じか

*3:あくまでイメージの方言。多分こんな感じ

*4:そう、神に近いお方なのだ

*5:僕より幾分気の利いたブログをやっている

https://takechin.com

*6:いやらしい意味はないぞ。想像力の高いそこの君

*7:wwwwwwwwwwww

*8:以下エビス

*9:淡路SA

*10:彼は確かに柔和な顔つきでかっぷくの良い、恵比寿様と言われれば納得の風貌の中年男性だった

*11:こちらには入ることはできなかった。後述するがなんとなく怪しげな部屋

*12:きっとそうなのである

*13:たまたま道場に顔を出した女性。相方の儀式を取り仕切った

*14:歴史や成り立ちなど

*15:あくまで推測

*16:あゝ、そういえばヒッチハイク中である

*17:ヒッチハイクの心得その一である

*18:世界最長の吊り橋として有名

*19:実際はネタが色々ありすぎてずっと爆笑してました

*20:書くのに疲れてきた

*21:謎にヒッチハイクをオススメする締めになった